UV硬化樹脂の開発動向と応用展開
〇材料・硬化技術・装置・評価など、高性能・高品質な硬化物を得るための要素技術
〇コーティング・インク・接着剤・ナノインプリント・3Dプリンタ等の応用技術動向
発刊日 | 2021年6月29日 |
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体裁 | B5判並製本 239頁 |
価格(税込)
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アカデミー割引価格 38,500円(税込) |
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ISBNコード | 978-4-86428-263-5 |
Cコード | C3058 |
材料・光重合・照射装置や評価手法など、様々な要素技術から成り立ち、塗料・コーティング、インク、接着剤、フォトレジストなど、幅広い広い領域で表面加工技術として利用されるUV硬化技術。
本書は、UV硬化技術について「材料・要素技術開発」と「用途・市場動向」の両方の面から最新の開発動向に迫ります。第1部で要素技術について基礎から実際に扱う上で役立つ知識を解説し、第2部で利用用途・産業分野毎での最新の開発動向を紹介します。
◎UV硬化樹脂の材料、硬化機構、UV照射技術、硬化前後の評価手法など、要素技術を徹底解説。
【材料技術】樹脂の基本構成成分のベースレジン、モノマーの種類・特徴・使い分け
【硬化機構】ラジカル / カチオン / アニオン、各硬化機構の原理・特徴・使い分け
┗「光があたらない影の部分の硬化手法」など、硬化技術の高機能化にもフォーカス。
【照射技術】UV光の基礎から一般的に利用されるUVランプ・照射装置を解説。
┗近年開発が加速するUV-LEDや、照射プロセスにおける課題についても紹介。
【評価手法】硬化前(液体)、硬化過程、硬化後(個体)と変化する性質をもつUV硬化樹脂。
┗各段階において性能を正しく評価するための考え方を解説。
◎様々な産業分野で応用されるUV硬化樹脂について、利用用途毎に最新の開発動向と今後の展望を解説。
【塗料・コーティング】市況・種類・配合、水性UV硬化塗料の開発事例。
光開始剤内蔵型樹脂の開発事例も掲載。
【インクジェット用インク】UV硬化型インクの開発動向について、インクジェットのメカニズムから徹底解説。
【接着剤】UV硬化型接着剤を重合方式から整理し、その評価方法と共に解説。
【ナノインプリント】UV硬化樹脂材料に求められる要件・基本的な特性とその応用、
現在利用されているレジスト材料も紹介。
【3Dプリンター】種類・材料技術を基礎から解説すると共に、ゲル材料を活用するために開発が進む
┗「3Dゲルプリンティング技術」についても紹介。
概要
「新規用途への展開」「環境問題への対応」「安全性の向上」のため、 日々開発が進むUV硬化樹脂の材料や硬化に関わる要素技術の開発動向を徹底解説。 ▼ベースレジン・モノマー UV硬化樹脂の基本構成成分であるベースレジン、密着性や被膜強度、耐久性を向上させるために希釈剤・架橋剤として重要な役割を果たすモノマー、それぞれの種類・特徴と使い分けから、選定のポイントまで幅広く紹介。 ▼光重合開始剤・増感剤 市場シェアの9割を占めるが酸素阻害・硬化収縮・密着性に問題があるラジカルUV硬化、その問題は軽減されるが酸による基材の腐食など新たなの問題が生じるカチオンUV硬化、それらの短所を改善するポテンシャルをもつが感度に改善が必要なアニオンUV硬化。各硬化機構と利用される光重合開始剤の種類・特徴・使い分けを紹介。 硬化不良の原因となる「光があたらない影の部分の硬化手法」など、硬化技術の高機能化にもフォーカス。 ▼UV光源の発光原理・照射技術 あまり議論させることのなかったUV硬化に用いられる光源の原理や照射装置。従来から利用されているUVランプ(高圧水銀ランプ)のみならず、近年開発が加速するUV-LEDについて、種類・特徴から照射プロセスが硬化物の発現する特性に与える影響まで幅広く解説。 また、異なる波長領域の光源を複合的に用いてUV硬化反応の重合活性種生成効率を増加させた設計事例として、UV と赤外線(IR)を併用した装置を紹介。 ▼UV硬化樹脂材料の評価手法 UV硬化樹脂材料の「硬化前の液体状態の性質」「硬化過程の振る舞い」「硬化後の固体の性質」について、物理化学・レオロジーの観点からの評価手法を解説。 |
アカデミー主導の基礎研究から産業応用分野での開発が主流となったUV硬化技術。 UV硬化技術の潜在的ポテンシャルを引き出し、次なる新しい用途展開に繋げるために、 様々な用途分野で利用されるUV硬化樹脂の「材料」「機能」トレンドおよび今後の展望を幅広く紹介。 ▼「塗料・コーティング」用途 家具・建物・自動車部品・化粧品ボトルなどのクリヤー塗装として利用されてきたUV硬化塗料。 市況概要、種類・配合などの要素技術から、更なる環境対応を目指す水性UV硬化塗料の開発事例まで幅広く解説。 また、工程短縮・低コスト化、耐候性向上を目的とした光開始剤内蔵型樹脂の開発事例を掲載。 ▼「インクジェット用インク」用途 VOC(Volatile Organic Compound)の発生がなく、速乾性で非浸透系メディアへのプリントが可能なことから、サイン・ディスプレイ市場のみならず、商業印刷市場においても溶剤インクに代わり導入が進むUV硬化型インク。 インクジェット方式のプリントメカニズムから、インク組成や使用上の課題と対応策、最近の開発動向まで幅広く解説。 ▼「接着剤」用途 溶剤揮発型や二液混合型の接着剤に比べて「素早い接着」「接着タイミングの制御」「接着部分の限定」など、使用時の自由度が大きいUV硬化型接着剤。 最近のUV硬化型接着剤の開発動向を重合方式の観点から整理し、その評価方法と共に解説。 ▼「ナノインプリント」用途 熱ナノインプリントの課題である「熱膨張率の差異による歪みや位置ずれ」「熱サイクルのためのプロセスの長時間化」「樹脂の分子サイズによる解像度の限界」を解決するために開発が進むUVナノインプリント。 使用されるUV硬化樹脂に求められる要件・基本的な特性とその応用展開、現在利用されているレジスト材料について解説。 ▼「3Dプリンター」用途 多品種少量生産やカスタム生産の対応が可能な点から、今後増々利用が広がると考えられる3Dプリンティング技術。 主にUV化性樹脂を材料とした3Dプリンティング技術を中心に、種類・材料技術と開発動向について詳述。 工業材料や医療モデルとして注目されているが、加工の難しさから利用が限られていた高分子ゲル。 液槽重合法によるゲル3Dプリンティング技術により、新規材料としての開発が加速する中、要素技術の開発動向とその応用を解説。 |
【目次抜粋】 【第1部】 UV硬化樹脂に関わる材料・硬化技術 第1章 UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題 第2章 ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用 第3章 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化 第1節 光重合開始剤・増感剤の基礎 第2節 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術 第3節 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開 第4章 UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例 第5章 光硬化型材料の硬化とその評価 【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド 第1章 UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望 第2章 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向 第3章 インクジェット用UV硬化型インクの開発動向 第4章 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向 第1節 UV硬化型接着剤の基礎とその評価 第2節 UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例 第5章 UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用 第6章 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向 第1節 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向 第2節 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向 |
各章の内容紹介 <本文抜粋>
【第1部】UV硬化樹脂に関わる材料・硬化技術
「第1章 UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題」
UV硬化技術は光を用いて硬化塗膜を作製する技術である。UV硬化技術の特徴は,高速硬化できることや画像形成に利用できること,また溶剤を使用しない環境保全型であり,光を用いるので省エネルギーな技術であることである。このような特徴を有するUV硬化技術は,印刷製版,インキ,接着剤,塗料,光学材料,医用材料,フォトレジストなど,さまざまな産業分野で利用されている。UV硬化技術は,1960年代から基礎研究や工業的利用が始まったが,近年この技術は大きく発展し,より高機能で高性能な硬化塗膜の創製に繋がっている。本稿では,UV硬化技術を理解して使いこなすための基礎的事項を中心に概論的に解説する。……(本文へ続く)
「第2章 ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用」
UV硬化システムは,環境にやさしい硬化システムであることから,1970年代にわが国でも開発が本格化し,以来,刷版材料,各種コーティング剤,多層配線板,粘・接着剤,封止剤,レジスト材料など,時代とともに多種多様な新規材料が開発されてきた。今では当たり前になった環境適応型システムではあるが,当初,UV硬化システムはライン速度向上,つまり生産性の向上を目指した溶剤希釈タイプからスタートし,時代が進むにつれ汎用溶剤に替えて低皮膚刺激性溶剤に,皮膚刺激性の強いモノマーに替えて低皮膚刺激性モノマーに,溶剤系に対して無溶剤化や溶剤の水系化が進み,現在に至っている。時代を追うにつれ,用途が広がり,材料,機器,システムなどが随時改良されてきたが,「ベースレジン,モノマー(架橋剤,希釈剤),光重合開始剤」というUV硬化性樹脂の基本構成は脈々と受け継がれている。
本稿では主にラジカル硬化系樹脂構成成分の基礎について解説したのち,UV 硬化性樹脂選定のポイント,最近のトピックス,および最近の開発例について説明する。……(本文へ続く)
「第3章 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化」
「第1節 光重合開始剤・増感剤の基礎」
UV硬化はそのメカニズムからラジカルUV硬化,カチオンUV硬化,およびアニオンUV硬化に分類することができる。それぞれの硬化機構における長所と短所を表1にまとめた。UV硬化材料の市場の約9割はラジカルUV硬化であるが,酸素阻害や硬化後の大きな体積収縮,密着性の悪さが問題となっている。また,カチオンUV硬化ではこれらの問題は軽減するものの,強酸による金属基板の腐食や空気中の湿気による硬化挙動の変動が深刻な問題となる。一方,アニオンUV硬化はラジカル系およびカチオン系の短所のほとんどを改善する潜在能力があるにもかかわらず,感度が低すぎるため実用には耐えにくいと考えられていた。その理由は,実用に耐え得る高感度な光塩基発生剤がなかったためである。“高感度な光塩基発生剤”とは,高効率(高量子収率)で光分解する光塩基発生剤である。これまでに,そのような光塩基発生剤が報告されていなかったのは,産業的にラジカルUV硬化とカチオンUV硬化で十分に目的が達成できていたためと考えられる。しかしながら,近年,表1にあるような問題点が指摘されるようになり,アニオンUV硬化が注目されるようになった。そこで,筆者らはアニオンUV硬化系の感度を向上させるために,弱塩基から強塩基までの様々な塩基を高効率で発生する新規な光塩基発生剤を開発してきた。
本稿では,光ラジカル重合開始剤,光酸発生剤の基礎と,筆者らが精力的に開発を進めている光塩基発生剤について紹介したい。……(本文へ続く)
「第2節 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術」
UV 硬化樹脂膜が厚い場合,あるいは樹脂中にフィラーや顔料などが含まれている場合には,UV 光が樹脂膜の表面近傍にしか入らず,光が届かない影部分の樹脂が全く硬化しないという現象がしばしば起こる。このようなときは,光化学反応と熱化学反応を巧みに組み合わせて光化学反応を増幅し,影部分の硬化反応を誘起する必要がある。ここでは,筆者らが開発した酸・塩基増殖反応系やフロンタル重合系の構築,およびエポキシ樹脂と組み合わせることで連鎖的に硬化剤を生成する連鎖硬化剤を用いた系について言及する。……(本文へ続く)
「第3節 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開」
……光ラジカル重合は,簡便かつ極めて迅速(数秒以下で完結)で生産性も高く,UV硬化技術に汎用される代表的なUV硬化反応の1つである。一方で,高い重合基濃度,架橋による硬化収縮をはじめ,ゲル効果,酸素阻害などに起因して,硬化物内部の架橋網目構造の不均一性や顔料・ナノ粒子,ポリマーなど各種添加剤の表面偏析や凝集,相分離など複雑な内部構造を与える。溶液重合におけるリビング重合のような各素過程の精密制御は困難であり,所望の材料特性,機能を得るには,塗工液の組成やUV 硬化条件など熟練した技術とノウハウの蓄積に依存しているのが産業界の実情といえる。
近年,光照射の有無で重合鎖末端の開裂を制御し,重合の進行をOn/Offできる光精密ラジカル重合が見出されている。本稿では,まず光精密ラジカル重合の研究動向を概説しつつ,精密重合機構をUV 硬化技術に組み込んだ筆者らの最近の成果を「精密UV 硬化」技術と定義して紹介する。フォトリソグラフィーなど精密なパターニング形成技術を指している訳ではないことをご容赦いただきたい。後述するように,迅速なUV 硬化反応に敢えて「光駆動型」の精密
ラジカル重合機構を組み込むことで,重合過程の時間軸を制御し,硬化膜内部にブロック共重合体のミクロ相分離に特徴づけられる十~数十nm 寸法のナノ構造を硬化と同時に(その場)形成できる。UVコーティング内部のナノ構造の制御と機能付与に焦点を当て,相分離形成プロセスの視点から精密UV 硬化技術の魅力と可能性について述べる。……(本文へ続く)
「第4章 UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例」
……UV 硬化技術は,光エネルギーにより引き起こされる化学反応を利用した技術であり,従来光開始剤をはじめとする光硬化材料の反応に関する議論は活発にされてきたが,UV 光源やその照射プロセスについてはあまり議論されることはなかった。本稿では,UV 照射装置について紹介するとともに,照射プロセスが硬化物の発現する特性にどのような影響を与えるかについて述べる。……(本文へ続く)
「第5章 光硬化型材料の硬化とその評価」
光硬化型材料とは,モノマー,オリゴマー等の重合性官能基を有する樹脂に,光照射により重合反応を開始できる光重合開始剤を配合した液状の混合物です。光硬化型材料は,光の照射により系中の開始剤からラジカル等の開始種が発生し,その働きで重合性官能基の重合が進行します。そして,重合の過程において多官能モノマーを架橋点としてネットワーク構造を形成することで固体化する液状反応性材料です。
したがって,光硬化型材料を評価するということは,当初の液体状態の性質だけでなく,光照射を行った場合にどのように重合して固体化し,さらに,固体としていかなる特性を持っているのかという,多様な事項についてそれぞれ調べていく必要があることになります。
ここではまず,固体と液体の違いについて物理化学的に説明し,さらに,物質の流れやすさを議論できるレオロジーという手法を用いて光硬化を見た場合の考え方について示します。そして,それらの知見に基づいて,光硬化型材料を,液体,硬化過程,そして,固体として評価するやり方の基本的な事項についての説明を行います。……(本文へ続く)
【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド
「第1章 UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望」
UV 硬化技術が生まれて約半世紀になる。この間,UV 硬化技術に不可欠な光源・装置や材料の研究開発が行われると共に,産業での用途展開がはかられてきた。今日,この技術は多くの産業分野における要素技術としてなくてはならない存在である。UV 硬化技術が工業的に用いられて約50年が過ぎた今日,この技術は一定の成熟期に達している。しかしながら,この技術の特徴を活用し尽くした訳ではなく,さらなる用途の広がりが期待される。UV硬化技術は,高機能・高性能材料を創製するための技術であると共に,省エネルギーや環境保護に関わるプロセスを創り出すための重要な技術でもある。UV 硬化技術の歴史と産業界での用途展開を理解することは,この技術が持っている潜在的ポテンシャルを引き出し,次なる新しい用途の展開に繋がる。……(本文へ続く)
「第2章 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向」
「第1節 塗料・コーティング用紫外線(UV)硬化樹脂の現状と今後 ~ウレタンアクリレートを中心に~」
20世紀中~後半の塗料・コーティング用樹脂の主流は,希釈や分散媒体に溶剤を使う溶剤型であった。同時代に世界的な地球環境の悪化が進行する中で,工業的に排出される有機化合物(VOC)の増加はその環境悪化の大きな要因とされていた。このため,欧米での排出溶剤規制の強化に端を発した環境対応型塗料およびコーティングシステムの開発と採用の拡大は,欧米のみならず日本・アジアへも拡大してきた。環境対応型原材料の先進地域としての欧州やUV 硬化型塗料の消費中心地である東アジアの市場を概観し,本用途での各種アクリレートの概要,そして筆者が市場開発に携わったウレタンアクリレートに焦点を当て,応用事例の歴史と現在,今後の動向を説明する。……(本文へ続く)
「第2節 光開始剤内蔵型樹脂の開発事例とハードコートへの応用」
UV 硬化樹脂は,最近多くの分野に応用され一般に普及しているが,未だに普及が遅れている分野もある。特に電子関係分野にはなくてはならない材料であるが,性能的に未だ克服すべき点が多くある。塗料分野には光開始剤の含有により分解残渣が性能に悪影響を及ぼし,耐候性を悪くすることが知られている。我々はこの点より,3年前に光開始剤内蔵型樹脂の開発を行い製品化をした。光開始剤を分子末端に結合させ分子中に組み込み,光開始剤残渣が系中に残留しないという本樹脂の特徴により耐候性の向上に大きな貢献を行った。その他の大きな特徴として,UV 硬化樹脂は薄膜3μm 以下の塗膜の硬化時に空気阻害が生じることが通常知られているが,内蔵型にすることにより1μm 以下の塗膜でも空気阻害なく硬化することが判明した。……(中略)
通常,光開始剤は塗料化の時に添加して使用するものであるが,本開発品は,主鎖骨格中に光開始剤を導入することにより,オリゴマー,モノマーと一体となり,配合時に光開始剤の添加忘れのトラブル等なく使用することができる。光開始剤残基が系中に残ることにより,低分子化合物が塗膜中に残渣として残り,表面ブリード及び耐候性を悪くしている要因になってきている。これらがUVプロセスが普及しない要因にもなってきている。
本開発品は光開始剤内蔵型だけではなく高屈折樹脂化した点が大きなメリットになる。これらの応用分野として電子部材だけでなくメガネ市場及び塗料分野にも応用できると考えている。……(本文へ続く)
「第3章 インクジェット用UV硬化型インクの開発動向」
インクジェットにおける紫外線硬化型インクの歴史は比較的新しく,2000年前後にフラットベッド型インクジェットプリンタに初めて導入された。それまでインクジェットによる大判の野外広告(サイン・ディスプレイ)プリントには主に溶剤インク(ソルベントインク)が使用されていたが,溶剤インクはVOCの発生から使用環境の制限があり,また換気も必要であった。溶剤インクと同様に速乾性で非浸透系メディアへのプリントが可能な紫外線硬化型インクは,硬化後にインク主成分のモノマー全体が高分子化するためVOC の発生がなく,溶剤インクに代わって徐々にこの市場での導入が進んできた。現在ではサイン・ディスプレイ市場のみならず,商業印刷市場や材料噴射型の3Dプリンタ(インクジェット方式)にも使用されている。
本稿では(2D)プリンティング用途向けの紫外線硬化型インクについて,プリントメカニズム,インク組成や使用における課題,および対応策,最近の開発動向について説明する。……(本文へ続く)
「第4章 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向」
「第1節 UV硬化型接着剤の基礎とその評価」
UV 硬化型接着剤では,接着を光照射で達成する。光反応は速いので,代表的な溶剤揮発型,二液混合型の接着剤に比べ,素早い接着が可能となる。また光照射で開始することから,接着するタイミングを制御できたり,接着部分を限定できるなど,使用時の自由度は大きい。さらに,出発物である低粘度の液体は分子レベルで被接着物表面と近接でき,投錨効果も含めてトータルの接着力の面からも有利である。液体のモノマーから固体のポリマーへの変換を利用するので,基本的に溶剤フリーの一液タイプとなる。このような特長を有するため,光を使った接着は日用品から工業用,医療用に至るまで幅広く用いられている。本稿では,最近のUV硬化型接着剤の動向を,重合方式の観点から整理し,併せてその評価方法を概説したい。……(本文へ続く)
「第2節 UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例」
筆者は1970年代中期にウレタン原料を製造するメーカーに就職して,ポリウレタン樹脂原料の開発技術を担当してきたが,その大半は塗料・コーティング分野向けの原料開発と処方開発であった。しかし,ポリウレタン系原料で塗料・コーティング用に適用できる製品群はかなりの割合で接着材にも転用可能であったので,接着剤用の国内市場向けの開発にも手を染めた。その最初が1970年代後期の無溶剤型2液ウレタン系(2K-PUR)でのドライラミネーション
用原料開発で,次に溶剤可溶型の高分子ポリウレタン(PUR),水性ポリウレタンディスパージョン(PUD)の合成を検討した。今世紀に入ってからは中国上海にベースを移して,2K-PURの各種用途への展開や,UV 硬化樹脂(主にウレタンアクリレート)のDVDボンディングとタッチパネル用フィルム接着の開発に関与した。その経験を基にDVDボンディングの分野への適用やタッチパネル用接着剤への開発事例として説明する。……(本文へ続く)
「第5章 UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用」
ナノインプリント法は,従来の紫外線を用いた半導体リソグラフィに代わる微細加工技術として,1996年に提唱されたナノ構造成型技術である。ナノ構造の金型(モールド)を,樹脂などの被加工材料にプレスし,金型形状を被加工材料に転写する微細構造成型技術である。これには,熱可塑性樹脂を用いる熱ナノインプリントと,UV 硬化樹脂を用いるUVナノインプリントの二通りが提案されている。作製する微細構造の最小サイズは,モールドに刻まれた溝パターンのサイズで定まるため,解像度はこのパターンサイズによって左右される。……(中略)
はじめに提唱されたのは,熱ナノインプリント方式によるものであった。熱ナノインプリントでは,ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂に,モールド(鋳型)をプレスし,冷却後にモールドを離型とすることで微細構造を基板上の樹脂に転写する。……(中略)
熱ナノインプリントにおけるこれらの課題を解決しようとしたのが,UV 硬化樹脂を用いるUVナノインプリントである。熱可塑性樹脂に代えてUV 硬化樹脂を用い,石英などのUV 透過性のモールドを通してUV を照射し樹脂を硬化させる。UVナノインプリントでは,室温でのプロセスが可能となり,プロセス時間が短縮できる。……(中略)
ここでは,UVナノインプリントに不可欠なUV 硬化樹脂について,求められる要件と基本的な特性を述べた上で,その応用展開についてのいくつかの話題を紹介する。……(本文へ続く)
「第6章 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向」
「第1節 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向」
30有余年前に三次元積層造形法(3Dプリンティング)の緒となる光造形法が試作模型を作製する目的で発明され,その後各種三次元積層造形法が開発され実用化されてきた。特に最近ではデジタルによるものづくりを目指し3Dプリンティングで最終製品を直接製造することが話題になっている。いまCOVID-19を契機に製造業の地図が大きく変わろうとしており,否応なしにデジタル化が進むとともにAI 化も大きく役割を果たそうとしている。この「デジタルによ
るものづくり」には3Dプリンティングが果たす役割は極めて大きいと考えられている。
本稿では3Dプリンティングとその材料,特に光硬化性樹脂を利用する3Dプリンティング材料を中心にその用途と開発動向を探ることとする。……(本文へ続く)
「第2節 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向」
高分子ゲルは高含水率,低摩擦,生態適合性といった優れた特性を有し,工業材料や医療モデルとして注目を集めているが,成型された状態から切削のような除去加工が難しいため,作製可能な形状は限られていた。そこで,筆者らはゲルを液槽重合法(光造形)を用いて3Dプリンティングを行い,注型成型では実現不可能だった複雑な形状のゲ
ルを造形してきた。この技術によって,用途が限られ新規材料として利用が難しかったゲルの応用利用に向けた研究の加速が期待される。本稿では,光造形技術を用いたゲルの3Dプリンティングについて最近の筆者らの成果を述べる。……(本文へ続く)
著者
大阪府立大学 | 白井 正充 | (株)大城戸化学研究所 | 大城戸 正治 | |
共栄社化学(株) | 池田 順一 | inkcube.org | 藤井 雅彦 | |
東京理科大学 | 有光 晃二 | 大阪府立大学 | 陶山寛志 | |
東京理科大学 | 青木 大亮 | 大阪府立大学 | 平井 義彦 | |
早稲田大学 | 須賀 健雄 | 横浜国立大学 | 萩原 恒夫 | |
へレウス(株) | 河村 紀代子 | 山形大学 | 佐藤 洋輔 | |
へレウス(株) | 足利 一男 | 山形大学 | 渡邉 洋輔 | |
東亞合成(株) | 佐々木 裕 | 山形大学 | 川上 勝 | |
(株)HAEWON T&D | 桐原 修 | 山形大学 | 古川 英光 |
書籍趣旨
しかしながら、UV硬化技術は「構成成分や硬化機構などの材料技術」「光源の照射装置とそのプロセス」「液体から固体への変化を正しく調べる評価手法」など、様々な要素技術から成り立っており、また、その利用用途・産業の広がりから、技術全般を俯瞰することが難しい状況にあります。そこで、本書ではUV硬化技術の要素技術とその利用・開発動向について、基礎から最新の開発動向・事例まで、専門家の方々より幅広くご執筆を賜りました。
本書は2部構成となっております。第1部では、樹脂の基本的な構成成分である「ベースレジン・モノマー・光重合開始剤」の種類・特徴・使い分けから、UVを発生させる光源装置および照射技術、さらに硬化前後の液体から固体への変化を評価する指針まで、要素技術を中心に解説しています。また、第2部では、「塗料・コーティング」「インクジェットインク」「接着剤」「ナノインプリント」「3Dプリンター」など、利用用途毎のUV硬化樹脂の開発動向と今後の展望を幅広く掲載しました。
本書がUV硬化技術に携わっている方、あるいはこれから利用を検討されている方の知識習得や問題を解決する一助となり、UV硬化技術の更なる開発・発展のお役に立つ1冊となれば幸いです。
目次
第1章 UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題
1. UV硬化技術とは
2. UV硬化技術の構成要素
2.1 光源
2.2 反応機構から見た硬化過程と材料
2.2.1 ラジカル型
2.2.2 カチオン型
2.2.3 アニオン型
2.3 光重合開始剤
2.3.1 光ラジカル発生剤
2.3.2 光酸発生剤
2.3.3 光塩基発生剤
3. UV硬化反応過程の解析法と硬化物特性の評価法
3.1 UV硬化反応過程の解析法
3.2 硬化物の特性評価法
4. UV硬化技術が抱える課題
4.1 光源と開始剤のマッチング
4.2 硬化阻害
4.3 硬化収縮
4.4 厚膜や着色膜の硬化
5. 今後の展望
第2章 ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用
1. UV 硬化性樹脂の構成成分
1.1 ベースレジン
1.1.1 ウレタンアクリレート
1.1.2 エポキシアクリレート
1.1.3 ポリマー
1.2 モノマー成分
2. UV 硬化性樹脂選定のポイント
2.1 モノマー
2.2 ベースレジンとモノマー
3. 最近のトピックス
3.1 パーフロロポリエーテルジアクリレート類
3.2 ポリグリセリンポリエーテルアクリレート
3.3 アクリルアミド系架橋剤
4. 最近の開発事例「カーボンナノチューブ(CNT)を利用した帯電防止コーティング剤の開発」
第3章 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化
第1節 光重合開始剤・増感剤の基礎
1. 光ラジカル重合開始剤
1.1 ベンゾイン型
1.2 ベンジルケタール型
1.3 ヒドロキシアセトフェノン型
1.4 アシルホスフィンオキシド型
1.5 水素引き抜き型
2. 光酸発生剤(Photoacid Generator, PAG)
3. 光塩基発生剤(Photobase Generator, PBG)
3.1 非イオン型PBGの開発と応用
3.2 イオン型PBGの開発と応用
第2節 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術
1. 影部分のUV硬化
1.1 能動的な加熱の利用
1.1.1 連鎖的な酸・塩基発生反応の利用
1.2 自発的な発熱(重合熱)の利用
1.2.1 フロンタル重合を利用した影部のカチオンUV硬化
1.2.2 Self-propagating polymerizationによる影部硬化
1.3 室温以下で硬化可能な系
1.3.1 光誘起レドックス開始重合の利用
1.3.2 シアノアクリラートの光アニオン重合
第3節 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開
1. 光精密ラジカル重合の研究動向
2. 重合誘起型ミクロ相分離に基づくコーティングへの機能付与
3. 光精密ラジカル重合のUV硬化への適用(精密UV硬化)と重合誘起型相分離
第4章 UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例
1. UV とは
2. UV 硬化に用いられる光源
2.1 UV ランプ(高圧水銀ランプ)の発光原理
2.2 UV ランプバルブ
2.3 高圧水銀灯の装置
2.4 UV-LED
2.5 UV-LED の発光波長
2.6 UV 硬化用LED 装置
3. UV 照射プロセスについて
3.1 照度と積算光量
3.2 硬化反応に対する照度の影響
3.3 酸素阻害の影響
3.4 UV 硬化反応の効率を上げる照射プロセス
第5章 光硬化型材料の硬化とその評価
1. 固体と液体
1.1 物理化学的に見た液体と固体
1.1.1 単純な固体と液体
1.1.2 ポリマーとは
1.1.3 ガラス化による固体化
1.1.4 ネットワーク構造の形成
1.2 固体と液体の違いをレオロジーとしてみると
1.2.1 固体と液体の力学モデル
1.2.2 粘弾性体とマックスウェルモデル
1.2.3 一般化マックスウェルモデル
1.2.4 応力緩和で見た固体
2. 液状材料としての評価
2.1 流動特性の評価
2.1.1 B型粘度計での粘度測定
2.1.2 外的条件の変化と生じる応力
2.2 温度と水素結合
2.2.1 ウレタンアクリレート類の水素結合
2.2.2 ウレタンアクリレート類の流動特性の温度依存性
3. 硬化過程の評価
3.1 重合過程の評価
3.1.1 重合性官能基の消失による重合性の評価
3.1.2 Photo-DSC 測定による重合性の評価
3.2 硬化過程の物理的変化について
3.2.1 Photo Rheometer 測定
3.2.2 重合時の体積収縮
3.2.3 硬化時に生じる応力集中の評価
4. 固体の評価
4.1 粘弾性特性の評価
4.1.1 動的粘弾性とは
4.1.2 粘弾性特性とその用途との関係
4.2 その他の評価
4.2.1 薄膜での表面特性の評価
【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド
第1章 UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望
1. UV硬化技術の歴史と用途の広がり
2. UV硬化技術応用のトレンド
2.1 材料のトレンド
2.1.1 モノマーと硬化系
2.1.2 開始剤
2.2 機能性のトレンド
2.2.1 表面機能
2.2.2 光学的機能
2.2.3 機械的機能
2.2.4 電気的機能
2.2.5 サステイナブル性
2.3 分野のトレンド
3. 今後の展望
第2章 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 塗料・コーティング用紫外線(UV)硬化樹脂の現状と今後
~ウレタンアクリレートを中心に~
1. Rad Cure 塗料市場概要
2. UV 硬化塗料の特長と用途
3. 各種アクリレート概要と特長
3.1 種類と特長
3.2 ウレタンアクリレート
4. 塗料の種類・配合と硬化過程
4.1 モノキュアー
4.2 デュアルキュアー塗料とその適用事例
5. 環境対応型UV硬化塗料
5.1 水性UV 硬化塗料の展開
5.2 各種水分散性UV 硬化樹脂
5.3 水性ウレタンアクリレート(UV 硬化PUD)とその応用事例
第2節 光開始剤内蔵型樹脂の開発事例とハードコートへの応用
1. UV 硬化プロセスとその応用
2. 光開始剤内蔵型高屈折樹脂の特徴
2.1 特徴
3. 光開始剤内蔵型高屈折樹脂の特性値
4. 光開始剤内蔵型高屈折樹脂と有機-無機ハイブリット化樹脂の作成と考察
第3章 インクジェット用UV硬化型インクの開発動向
1. インクジェットにおけるプリントメカニズム
2. インクジェット用紫外線硬化型インクの主要成分
2.1 モノマー
2.2 重合開始剤と増感剤
2.3 重合禁止剤
2.4 水性紫外線硬化型インク
3. インクジェットにおける吐出安定性
4. インクジェット応用における紫外線硬化型インクの開発動向
4.1 インク小滴化と酸素阻害
4.2 ゲル化によるピニング
4.3 デコラティブへの適用と高延伸性インク
4.4 食品包装でのマイグレーション防止
第4章 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 UV硬化型接着剤の基礎とその評価
1.概要
2.分類
2.1 ラジカル重合型
2.2 カチオン重合型
2.3 アニオン重合型
2.4 付加重合型
2.5 その他
3.評価
第2節 UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例
1. DVD ボンディング用へのウレタンアクリレートの適用
2. タッチパネルへの適用
第5章 UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用
1. ナノインプリント法とUV硬化樹脂
2. UVナノインプリントのためのUV硬化樹脂の要件
2.1 ナノ空間への樹脂充填過程
2.2 ナノ空間中でのUV光照射過程
2.3 ナノ空間中でのUV硬化過程
2.4 離型とUV硬化樹脂
2.5 UV硬化収縮
3. UVナノインプリントの応用
3.1 UVナノインプリントの用途
3.2 UVナノインプリント用UV硬化樹脂レジストの現状と今後
4. まとめ
第6章 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向
1. 3Dプリンティングとその分類
1.1 材料市場
2. 3Dプリンティングとその用途
3. 3Dプリンティングで使われる手段
4. 光硬化性樹脂を用いる3Dプリンティング
4.1 レーザを用いる大型の自由液面方式液槽光重合法
4.2 下面からレーザ光を照射する規制液面方式と下面から
UV-LEDや紫外線ランプを用いてDLPを用いて光照射する規制液面方式
4.2.1 レーザ光を利用する下面照射規制液面方式
4.2.2 DLPやLCDを利用する下面照射規制液面方式
4.2.3 光硬化性樹脂の開発動向
4.3 インクジェット方式により光硬化性樹脂を吐出し紫外線ランプにより硬化させて積層する方式(MJT)
5. 造形物の用途とその材料
5.1 自由液面方式VPP造形物の用途と材料
5.2 規制液面方式VPP造形物の用途と材料開発動向
5.3 インクジェットタイプの材料噴射方式の造形機
6. 光硬化性樹脂を利用する新しい造形
6.1 セラミック造形
6.2 ポリテトラフルオロエチレンの造形
6.3 金属造形
7. まとめと今後の展望
第2節 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向
1. 3D ゲルプリンティング用材料
1.1 光重合開始剤
1.2 光吸収剤
1.3 3D ゲルプリンティングのハードウェア
概要
「新規用途への展開」「環境問題への対応」「安全性の向上」のため、 日々開発が進むUV硬化樹脂の材料や硬化に関わる要素技術の開発動向を徹底解説。 ▼ベースレジン・モノマー UV硬化樹脂の基本構成成分であるベースレジン、密着性や被膜強度、耐久性を向上させるために希釈剤・架橋剤として重要な役割を果たすモノマー、それぞれの種類・特徴と使い分けから、選定のポイントまで幅広く紹介。 ▼光重合開始剤・増感剤 市場シェアの9割を占めるが酸素阻害・硬化収縮・密着性に問題があるラジカルUV硬化、その問題は軽減されるが酸による基材の腐食など新たなの問題が生じるカチオンUV硬化、それらの短所を改善するポテンシャルをもつが感度に改善が必要なアニオンUV硬化。各硬化機構と利用される光重合開始剤の種類・特徴・使い分けを紹介。 硬化不良の原因となる「光があたらない影の部分の硬化手法」など、硬化技術の高機能化にもフォーカス。 ▼UV光源の発光原理・照射技術 あまり議論させることのなかったUV硬化に用いられる光源の原理や照射装置。従来から利用されているUVランプ(高圧水銀ランプ)のみならず、近年開発が加速するUV-LEDについて、種類・特徴から照射プロセスが硬化物の発現する特性に与える影響まで幅広く解説。 また、異なる波長領域の光源を複合的に用いてUV硬化反応の重合活性種生成効率を増加させた設計事例として、UV と赤外線(IR)を併用した装置を紹介。 ▼UV硬化樹脂材料の評価手法 UV硬化樹脂材料の「硬化前の液体状態の性質」「硬化過程の振る舞い」「硬化後の固体の性質」について、物理化学・レオロジーの観点からの評価手法を解説。 |
アカデミー主導の基礎研究から産業応用分野での開発が主流となったUV硬化技術。 UV硬化技術の潜在的ポテンシャルを引き出し、次なる新しい用途展開に繋げるために、 様々な用途分野で利用されるUV硬化樹脂の「材料」「機能」トレンドおよび今後の展望を幅広く紹介。 ▼「塗料・コーティング」用途 家具・建物・自動車部品・化粧品ボトルなどのクリヤー塗装として利用されてきたUV硬化塗料。 市況概要、種類・配合などの要素技術から、更なる環境対応を目指す水性UV硬化塗料の開発事例まで幅広く解説。 また、工程短縮・低コスト化、耐候性向上を目的とした光開始剤内蔵型樹脂の開発事例を掲載。 ▼「インクジェット用インク」用途 VOC(Volatile Organic Compound)の発生がなく、速乾性で非浸透系メディアへのプリントが可能なことから、サイン・ディスプレイ市場のみならず、商業印刷市場においても溶剤インクに代わり導入が進むUV硬化型インク。 インクジェット方式のプリントメカニズムから、インク組成や使用上の課題と対応策、最近の開発動向まで幅広く解説。 ▼「接着剤」用途 溶剤揮発型や二液混合型の接着剤に比べて「素早い接着」「接着タイミングの制御」「接着部分の限定」など、使用時の自由度が大きいUV硬化型接着剤。 最近のUV硬化型接着剤の開発動向を重合方式の観点から整理し、その評価方法と共に解説。 ▼「ナノインプリント」用途 熱ナノインプリントの課題である「熱膨張率の差異による歪みや位置ずれ」「熱サイクルのためのプロセスの長時間化」「樹脂の分子サイズによる解像度の限界」を解決するために開発が進むUVナノインプリント。 使用されるUV硬化樹脂に求められる要件・基本的な特性とその応用展開、現在利用されているレジスト材料について解説。 ▼「3Dプリンター」用途 多品種少量生産やカスタム生産の対応が可能な点から、今後増々利用が広がると考えられる3Dプリンティング技術。 主にUV化性樹脂を材料とした3Dプリンティング技術を中心に、種類・材料技術と開発動向について詳述。 工業材料や医療モデルとして注目されているが、加工の難しさから利用が限られていた高分子ゲル。 液槽重合法によるゲル3Dプリンティング技術により、新規材料としての開発が加速する中、要素技術の開発動向とその応用を解説。 |
【目次抜粋】 【第1部】 UV硬化樹脂に関わる材料・硬化技術 第1章 UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題 第2章 ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用 第3章 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化 第1節 光重合開始剤・増感剤の基礎 第2節 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術 第3節 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開 第4章 UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例 第5章 光硬化型材料の硬化とその評価 【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド 第1章 UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望 第2章 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向 第3章 インクジェット用UV硬化型インクの開発動向 第4章 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向 第1節 UV硬化型接着剤の基礎とその評価 第2節 UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例 第5章 UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用 第6章 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向 第1節 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向 第2節 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向 |
各章の内容紹介 <本文抜粋>
【第1部】UV硬化樹脂に関わる材料・硬化技術
「第1章 UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題」
UV硬化技術は光を用いて硬化塗膜を作製する技術である。UV硬化技術の特徴は,高速硬化できることや画像形成に利用できること,また溶剤を使用しない環境保全型であり,光を用いるので省エネルギーな技術であることである。このような特徴を有するUV硬化技術は,印刷製版,インキ,接着剤,塗料,光学材料,医用材料,フォトレジストなど,さまざまな産業分野で利用されている。UV硬化技術は,1960年代から基礎研究や工業的利用が始まったが,近年この技術は大きく発展し,より高機能で高性能な硬化塗膜の創製に繋がっている。本稿では,UV硬化技術を理解して使いこなすための基礎的事項を中心に概論的に解説する。……(本文へ続く)
「第2章 ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用」
UV硬化システムは,環境にやさしい硬化システムであることから,1970年代にわが国でも開発が本格化し,以来,刷版材料,各種コーティング剤,多層配線板,粘・接着剤,封止剤,レジスト材料など,時代とともに多種多様な新規材料が開発されてきた。今では当たり前になった環境適応型システムではあるが,当初,UV硬化システムはライン速度向上,つまり生産性の向上を目指した溶剤希釈タイプからスタートし,時代が進むにつれ汎用溶剤に替えて低皮膚刺激性溶剤に,皮膚刺激性の強いモノマーに替えて低皮膚刺激性モノマーに,溶剤系に対して無溶剤化や溶剤の水系化が進み,現在に至っている。時代を追うにつれ,用途が広がり,材料,機器,システムなどが随時改良されてきたが,「ベースレジン,モノマー(架橋剤,希釈剤),光重合開始剤」というUV硬化性樹脂の基本構成は脈々と受け継がれている。
本稿では主にラジカル硬化系樹脂構成成分の基礎について解説したのち,UV 硬化性樹脂選定のポイント,最近のトピックス,および最近の開発例について説明する。……(本文へ続く)
「第3章 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化」
「第1節 光重合開始剤・増感剤の基礎」
UV硬化はそのメカニズムからラジカルUV硬化,カチオンUV硬化,およびアニオンUV硬化に分類することができる。それぞれの硬化機構における長所と短所を表1にまとめた。UV硬化材料の市場の約9割はラジカルUV硬化であるが,酸素阻害や硬化後の大きな体積収縮,密着性の悪さが問題となっている。また,カチオンUV硬化ではこれらの問題は軽減するものの,強酸による金属基板の腐食や空気中の湿気による硬化挙動の変動が深刻な問題となる。一方,アニオンUV硬化はラジカル系およびカチオン系の短所のほとんどを改善する潜在能力があるにもかかわらず,感度が低すぎるため実用には耐えにくいと考えられていた。その理由は,実用に耐え得る高感度な光塩基発生剤がなかったためである。“高感度な光塩基発生剤”とは,高効率(高量子収率)で光分解する光塩基発生剤である。これまでに,そのような光塩基発生剤が報告されていなかったのは,産業的にラジカルUV硬化とカチオンUV硬化で十分に目的が達成できていたためと考えられる。しかしながら,近年,表1にあるような問題点が指摘されるようになり,アニオンUV硬化が注目されるようになった。そこで,筆者らはアニオンUV硬化系の感度を向上させるために,弱塩基から強塩基までの様々な塩基を高効率で発生する新規な光塩基発生剤を開発してきた。
本稿では,光ラジカル重合開始剤,光酸発生剤の基礎と,筆者らが精力的に開発を進めている光塩基発生剤について紹介したい。……(本文へ続く)
「第2節 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術」
UV 硬化樹脂膜が厚い場合,あるいは樹脂中にフィラーや顔料などが含まれている場合には,UV 光が樹脂膜の表面近傍にしか入らず,光が届かない影部分の樹脂が全く硬化しないという現象がしばしば起こる。このようなときは,光化学反応と熱化学反応を巧みに組み合わせて光化学反応を増幅し,影部分の硬化反応を誘起する必要がある。ここでは,筆者らが開発した酸・塩基増殖反応系やフロンタル重合系の構築,およびエポキシ樹脂と組み合わせることで連鎖的に硬化剤を生成する連鎖硬化剤を用いた系について言及する。……(本文へ続く)
「第3節 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開」
……光ラジカル重合は,簡便かつ極めて迅速(数秒以下で完結)で生産性も高く,UV硬化技術に汎用される代表的なUV硬化反応の1つである。一方で,高い重合基濃度,架橋による硬化収縮をはじめ,ゲル効果,酸素阻害などに起因して,硬化物内部の架橋網目構造の不均一性や顔料・ナノ粒子,ポリマーなど各種添加剤の表面偏析や凝集,相分離など複雑な内部構造を与える。溶液重合におけるリビング重合のような各素過程の精密制御は困難であり,所望の材料特性,機能を得るには,塗工液の組成やUV 硬化条件など熟練した技術とノウハウの蓄積に依存しているのが産業界の実情といえる。
近年,光照射の有無で重合鎖末端の開裂を制御し,重合の進行をOn/Offできる光精密ラジカル重合が見出されている。本稿では,まず光精密ラジカル重合の研究動向を概説しつつ,精密重合機構をUV 硬化技術に組み込んだ筆者らの最近の成果を「精密UV 硬化」技術と定義して紹介する。フォトリソグラフィーなど精密なパターニング形成技術を指している訳ではないことをご容赦いただきたい。後述するように,迅速なUV 硬化反応に敢えて「光駆動型」の精密
ラジカル重合機構を組み込むことで,重合過程の時間軸を制御し,硬化膜内部にブロック共重合体のミクロ相分離に特徴づけられる十~数十nm 寸法のナノ構造を硬化と同時に(その場)形成できる。UVコーティング内部のナノ構造の制御と機能付与に焦点を当て,相分離形成プロセスの視点から精密UV 硬化技術の魅力と可能性について述べる。……(本文へ続く)
「第4章 UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例」
……UV 硬化技術は,光エネルギーにより引き起こされる化学反応を利用した技術であり,従来光開始剤をはじめとする光硬化材料の反応に関する議論は活発にされてきたが,UV 光源やその照射プロセスについてはあまり議論されることはなかった。本稿では,UV 照射装置について紹介するとともに,照射プロセスが硬化物の発現する特性にどのような影響を与えるかについて述べる。……(本文へ続く)
「第5章 光硬化型材料の硬化とその評価」
光硬化型材料とは,モノマー,オリゴマー等の重合性官能基を有する樹脂に,光照射により重合反応を開始できる光重合開始剤を配合した液状の混合物です。光硬化型材料は,光の照射により系中の開始剤からラジカル等の開始種が発生し,その働きで重合性官能基の重合が進行します。そして,重合の過程において多官能モノマーを架橋点としてネットワーク構造を形成することで固体化する液状反応性材料です。
したがって,光硬化型材料を評価するということは,当初の液体状態の性質だけでなく,光照射を行った場合にどのように重合して固体化し,さらに,固体としていかなる特性を持っているのかという,多様な事項についてそれぞれ調べていく必要があることになります。
ここではまず,固体と液体の違いについて物理化学的に説明し,さらに,物質の流れやすさを議論できるレオロジーという手法を用いて光硬化を見た場合の考え方について示します。そして,それらの知見に基づいて,光硬化型材料を,液体,硬化過程,そして,固体として評価するやり方の基本的な事項についての説明を行います。……(本文へ続く)
【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド
「第1章 UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望」
UV 硬化技術が生まれて約半世紀になる。この間,UV 硬化技術に不可欠な光源・装置や材料の研究開発が行われると共に,産業での用途展開がはかられてきた。今日,この技術は多くの産業分野における要素技術としてなくてはならない存在である。UV 硬化技術が工業的に用いられて約50年が過ぎた今日,この技術は一定の成熟期に達している。しかしながら,この技術の特徴を活用し尽くした訳ではなく,さらなる用途の広がりが期待される。UV硬化技術は,高機能・高性能材料を創製するための技術であると共に,省エネルギーや環境保護に関わるプロセスを創り出すための重要な技術でもある。UV 硬化技術の歴史と産業界での用途展開を理解することは,この技術が持っている潜在的ポテンシャルを引き出し,次なる新しい用途の展開に繋がる。……(本文へ続く)
「第2章 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向」
「第1節 塗料・コーティング用紫外線(UV)硬化樹脂の現状と今後 ~ウレタンアクリレートを中心に~」
20世紀中~後半の塗料・コーティング用樹脂の主流は,希釈や分散媒体に溶剤を使う溶剤型であった。同時代に世界的な地球環境の悪化が進行する中で,工業的に排出される有機化合物(VOC)の増加はその環境悪化の大きな要因とされていた。このため,欧米での排出溶剤規制の強化に端を発した環境対応型塗料およびコーティングシステムの開発と採用の拡大は,欧米のみならず日本・アジアへも拡大してきた。環境対応型原材料の先進地域としての欧州やUV 硬化型塗料の消費中心地である東アジアの市場を概観し,本用途での各種アクリレートの概要,そして筆者が市場開発に携わったウレタンアクリレートに焦点を当て,応用事例の歴史と現在,今後の動向を説明する。……(本文へ続く)
「第2節 光開始剤内蔵型樹脂の開発事例とハードコートへの応用」
UV 硬化樹脂は,最近多くの分野に応用され一般に普及しているが,未だに普及が遅れている分野もある。特に電子関係分野にはなくてはならない材料であるが,性能的に未だ克服すべき点が多くある。塗料分野には光開始剤の含有により分解残渣が性能に悪影響を及ぼし,耐候性を悪くすることが知られている。我々はこの点より,3年前に光開始剤内蔵型樹脂の開発を行い製品化をした。光開始剤を分子末端に結合させ分子中に組み込み,光開始剤残渣が系中に残留しないという本樹脂の特徴により耐候性の向上に大きな貢献を行った。その他の大きな特徴として,UV 硬化樹脂は薄膜3μm 以下の塗膜の硬化時に空気阻害が生じることが通常知られているが,内蔵型にすることにより1μm 以下の塗膜でも空気阻害なく硬化することが判明した。……(中略)
通常,光開始剤は塗料化の時に添加して使用するものであるが,本開発品は,主鎖骨格中に光開始剤を導入することにより,オリゴマー,モノマーと一体となり,配合時に光開始剤の添加忘れのトラブル等なく使用することができる。光開始剤残基が系中に残ることにより,低分子化合物が塗膜中に残渣として残り,表面ブリード及び耐候性を悪くしている要因になってきている。これらがUVプロセスが普及しない要因にもなってきている。
本開発品は光開始剤内蔵型だけではなく高屈折樹脂化した点が大きなメリットになる。これらの応用分野として電子部材だけでなくメガネ市場及び塗料分野にも応用できると考えている。……(本文へ続く)
「第3章 インクジェット用UV硬化型インクの開発動向」
インクジェットにおける紫外線硬化型インクの歴史は比較的新しく,2000年前後にフラットベッド型インクジェットプリンタに初めて導入された。それまでインクジェットによる大判の野外広告(サイン・ディスプレイ)プリントには主に溶剤インク(ソルベントインク)が使用されていたが,溶剤インクはVOCの発生から使用環境の制限があり,また換気も必要であった。溶剤インクと同様に速乾性で非浸透系メディアへのプリントが可能な紫外線硬化型インクは,硬化後にインク主成分のモノマー全体が高分子化するためVOC の発生がなく,溶剤インクに代わって徐々にこの市場での導入が進んできた。現在ではサイン・ディスプレイ市場のみならず,商業印刷市場や材料噴射型の3Dプリンタ(インクジェット方式)にも使用されている。
本稿では(2D)プリンティング用途向けの紫外線硬化型インクについて,プリントメカニズム,インク組成や使用における課題,および対応策,最近の開発動向について説明する。……(本文へ続く)
「第4章 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向」
「第1節 UV硬化型接着剤の基礎とその評価」
UV 硬化型接着剤では,接着を光照射で達成する。光反応は速いので,代表的な溶剤揮発型,二液混合型の接着剤に比べ,素早い接着が可能となる。また光照射で開始することから,接着するタイミングを制御できたり,接着部分を限定できるなど,使用時の自由度は大きい。さらに,出発物である低粘度の液体は分子レベルで被接着物表面と近接でき,投錨効果も含めてトータルの接着力の面からも有利である。液体のモノマーから固体のポリマーへの変換を利用するので,基本的に溶剤フリーの一液タイプとなる。このような特長を有するため,光を使った接着は日用品から工業用,医療用に至るまで幅広く用いられている。本稿では,最近のUV硬化型接着剤の動向を,重合方式の観点から整理し,併せてその評価方法を概説したい。……(本文へ続く)
「第2節 UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例」
筆者は1970年代中期にウレタン原料を製造するメーカーに就職して,ポリウレタン樹脂原料の開発技術を担当してきたが,その大半は塗料・コーティング分野向けの原料開発と処方開発であった。しかし,ポリウレタン系原料で塗料・コーティング用に適用できる製品群はかなりの割合で接着材にも転用可能であったので,接着剤用の国内市場向けの開発にも手を染めた。その最初が1970年代後期の無溶剤型2液ウレタン系(2K-PUR)でのドライラミネーション
用原料開発で,次に溶剤可溶型の高分子ポリウレタン(PUR),水性ポリウレタンディスパージョン(PUD)の合成を検討した。今世紀に入ってからは中国上海にベースを移して,2K-PURの各種用途への展開や,UV 硬化樹脂(主にウレタンアクリレート)のDVDボンディングとタッチパネル用フィルム接着の開発に関与した。その経験を基にDVDボンディングの分野への適用やタッチパネル用接着剤への開発事例として説明する。……(本文へ続く)
「第5章 UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用」
ナノインプリント法は,従来の紫外線を用いた半導体リソグラフィに代わる微細加工技術として,1996年に提唱されたナノ構造成型技術である。ナノ構造の金型(モールド)を,樹脂などの被加工材料にプレスし,金型形状を被加工材料に転写する微細構造成型技術である。これには,熱可塑性樹脂を用いる熱ナノインプリントと,UV 硬化樹脂を用いるUVナノインプリントの二通りが提案されている。作製する微細構造の最小サイズは,モールドに刻まれた溝パターンのサイズで定まるため,解像度はこのパターンサイズによって左右される。……(中略)
はじめに提唱されたのは,熱ナノインプリント方式によるものであった。熱ナノインプリントでは,ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂に,モールド(鋳型)をプレスし,冷却後にモールドを離型とすることで微細構造を基板上の樹脂に転写する。……(中略)
熱ナノインプリントにおけるこれらの課題を解決しようとしたのが,UV 硬化樹脂を用いるUVナノインプリントである。熱可塑性樹脂に代えてUV 硬化樹脂を用い,石英などのUV 透過性のモールドを通してUV を照射し樹脂を硬化させる。UVナノインプリントでは,室温でのプロセスが可能となり,プロセス時間が短縮できる。……(中略)
ここでは,UVナノインプリントに不可欠なUV 硬化樹脂について,求められる要件と基本的な特性を述べた上で,その応用展開についてのいくつかの話題を紹介する。……(本文へ続く)
「第6章 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向」
「第1節 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向」
30有余年前に三次元積層造形法(3Dプリンティング)の緒となる光造形法が試作模型を作製する目的で発明され,その後各種三次元積層造形法が開発され実用化されてきた。特に最近ではデジタルによるものづくりを目指し3Dプリンティングで最終製品を直接製造することが話題になっている。いまCOVID-19を契機に製造業の地図が大きく変わろうとしており,否応なしにデジタル化が進むとともにAI 化も大きく役割を果たそうとしている。この「デジタルによ
るものづくり」には3Dプリンティングが果たす役割は極めて大きいと考えられている。
本稿では3Dプリンティングとその材料,特に光硬化性樹脂を利用する3Dプリンティング材料を中心にその用途と開発動向を探ることとする。……(本文へ続く)
「第2節 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向」
高分子ゲルは高含水率,低摩擦,生態適合性といった優れた特性を有し,工業材料や医療モデルとして注目を集めているが,成型された状態から切削のような除去加工が難しいため,作製可能な形状は限られていた。そこで,筆者らはゲルを液槽重合法(光造形)を用いて3Dプリンティングを行い,注型成型では実現不可能だった複雑な形状のゲ
ルを造形してきた。この技術によって,用途が限られ新規材料として利用が難しかったゲルの応用利用に向けた研究の加速が期待される。本稿では,光造形技術を用いたゲルの3Dプリンティングについて最近の筆者らの成果を述べる。……(本文へ続く)
著者
大阪府立大学 | 白井 正充 | (株)大城戸化学研究所 | 大城戸 正治 | |
共栄社化学(株) | 池田 順一 | inkcube.org | 藤井 雅彦 | |
東京理科大学 | 有光 晃二 | 大阪府立大学 | 陶山寛志 | |
東京理科大学 | 青木 大亮 | 大阪府立大学 | 平井 義彦 | |
早稲田大学 | 須賀 健雄 | 横浜国立大学 | 萩原 恒夫 | |
へレウス(株) | 河村 紀代子 | 山形大学 | 佐藤 洋輔 | |
へレウス(株) | 足利 一男 | 山形大学 | 渡邉 洋輔 | |
東亞合成(株) | 佐々木 裕 | 山形大学 | 川上 勝 | |
(株)HAEWON T&D | 桐原 修 | 山形大学 | 古川 英光 |
書籍趣旨
しかしながら、UV硬化技術は「構成成分や硬化機構などの材料技術」「光源の照射装置とそのプロセス」「液体から固体への変化を正しく調べる評価手法」など、様々な要素技術から成り立っており、また、その利用用途・産業の広がりから、技術全般を俯瞰することが難しい状況にあります。そこで、本書ではUV硬化技術の要素技術とその利用・開発動向について、基礎から最新の開発動向・事例まで、専門家の方々より幅広くご執筆を賜りました。
本書は2部構成となっております。第1部では、樹脂の基本的な構成成分である「ベースレジン・モノマー・光重合開始剤」の種類・特徴・使い分けから、UVを発生させる光源装置および照射技術、さらに硬化前後の液体から固体への変化を評価する指針まで、要素技術を中心に解説しています。また、第2部では、「塗料・コーティング」「インクジェットインク」「接着剤」「ナノインプリント」「3Dプリンター」など、利用用途毎のUV硬化樹脂の開発動向と今後の展望を幅広く掲載しました。
本書がUV硬化技術に携わっている方、あるいはこれから利用を検討されている方の知識習得や問題を解決する一助となり、UV硬化技術の更なる開発・発展のお役に立つ1冊となれば幸いです。
目次
第1章 UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題
1. UV硬化技術とは
2. UV硬化技術の構成要素
2.1 光源
2.2 反応機構から見た硬化過程と材料
2.2.1 ラジカル型
2.2.2 カチオン型
2.2.3 アニオン型
2.3 光重合開始剤
2.3.1 光ラジカル発生剤
2.3.2 光酸発生剤
2.3.3 光塩基発生剤
3. UV硬化反応過程の解析法と硬化物特性の評価法
3.1 UV硬化反応過程の解析法
3.2 硬化物の特性評価法
4. UV硬化技術が抱える課題
4.1 光源と開始剤のマッチング
4.2 硬化阻害
4.3 硬化収縮
4.4 厚膜や着色膜の硬化
5. 今後の展望
第2章 ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用
1. UV 硬化性樹脂の構成成分
1.1 ベースレジン
1.1.1 ウレタンアクリレート
1.1.2 エポキシアクリレート
1.1.3 ポリマー
1.2 モノマー成分
2. UV 硬化性樹脂選定のポイント
2.1 モノマー
2.2 ベースレジンとモノマー
3. 最近のトピックス
3.1 パーフロロポリエーテルジアクリレート類
3.2 ポリグリセリンポリエーテルアクリレート
3.3 アクリルアミド系架橋剤
4. 最近の開発事例「カーボンナノチューブ(CNT)を利用した帯電防止コーティング剤の開発」
第3章 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化
第1節 光重合開始剤・増感剤の基礎
1. 光ラジカル重合開始剤
1.1 ベンゾイン型
1.2 ベンジルケタール型
1.3 ヒドロキシアセトフェノン型
1.4 アシルホスフィンオキシド型
1.5 水素引き抜き型
2. 光酸発生剤(Photoacid Generator, PAG)
3. 光塩基発生剤(Photobase Generator, PBG)
3.1 非イオン型PBGの開発と応用
3.2 イオン型PBGの開発と応用
第2節 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術
1. 影部分のUV硬化
1.1 能動的な加熱の利用
1.1.1 連鎖的な酸・塩基発生反応の利用
1.2 自発的な発熱(重合熱)の利用
1.2.1 フロンタル重合を利用した影部のカチオンUV硬化
1.2.2 Self-propagating polymerizationによる影部硬化
1.3 室温以下で硬化可能な系
1.3.1 光誘起レドックス開始重合の利用
1.3.2 シアノアクリラートの光アニオン重合
第3節 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開
1. 光精密ラジカル重合の研究動向
2. 重合誘起型ミクロ相分離に基づくコーティングへの機能付与
3. 光精密ラジカル重合のUV硬化への適用(精密UV硬化)と重合誘起型相分離
第4章 UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例
1. UV とは
2. UV 硬化に用いられる光源
2.1 UV ランプ(高圧水銀ランプ)の発光原理
2.2 UV ランプバルブ
2.3 高圧水銀灯の装置
2.4 UV-LED
2.5 UV-LED の発光波長
2.6 UV 硬化用LED 装置
3. UV 照射プロセスについて
3.1 照度と積算光量
3.2 硬化反応に対する照度の影響
3.3 酸素阻害の影響
3.4 UV 硬化反応の効率を上げる照射プロセス
第5章 光硬化型材料の硬化とその評価
1. 固体と液体
1.1 物理化学的に見た液体と固体
1.1.1 単純な固体と液体
1.1.2 ポリマーとは
1.1.3 ガラス化による固体化
1.1.4 ネットワーク構造の形成
1.2 固体と液体の違いをレオロジーとしてみると
1.2.1 固体と液体の力学モデル
1.2.2 粘弾性体とマックスウェルモデル
1.2.3 一般化マックスウェルモデル
1.2.4 応力緩和で見た固体
2. 液状材料としての評価
2.1 流動特性の評価
2.1.1 B型粘度計での粘度測定
2.1.2 外的条件の変化と生じる応力
2.2 温度と水素結合
2.2.1 ウレタンアクリレート類の水素結合
2.2.2 ウレタンアクリレート類の流動特性の温度依存性
3. 硬化過程の評価
3.1 重合過程の評価
3.1.1 重合性官能基の消失による重合性の評価
3.1.2 Photo-DSC 測定による重合性の評価
3.2 硬化過程の物理的変化について
3.2.1 Photo Rheometer 測定
3.2.2 重合時の体積収縮
3.2.3 硬化時に生じる応力集中の評価
4. 固体の評価
4.1 粘弾性特性の評価
4.1.1 動的粘弾性とは
4.1.2 粘弾性特性とその用途との関係
4.2 その他の評価
4.2.1 薄膜での表面特性の評価
【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド
第1章 UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望
1. UV硬化技術の歴史と用途の広がり
2. UV硬化技術応用のトレンド
2.1 材料のトレンド
2.1.1 モノマーと硬化系
2.1.2 開始剤
2.2 機能性のトレンド
2.2.1 表面機能
2.2.2 光学的機能
2.2.3 機械的機能
2.2.4 電気的機能
2.2.5 サステイナブル性
2.3 分野のトレンド
3. 今後の展望
第2章 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 塗料・コーティング用紫外線(UV)硬化樹脂の現状と今後
~ウレタンアクリレートを中心に~
1. Rad Cure 塗料市場概要
2. UV 硬化塗料の特長と用途
3. 各種アクリレート概要と特長
3.1 種類と特長
3.2 ウレタンアクリレート
4. 塗料の種類・配合と硬化過程
4.1 モノキュアー
4.2 デュアルキュアー塗料とその適用事例
5. 環境対応型UV硬化塗料
5.1 水性UV 硬化塗料の展開
5.2 各種水分散性UV 硬化樹脂
5.3 水性ウレタンアクリレート(UV 硬化PUD)とその応用事例
第2節 光開始剤内蔵型樹脂の開発事例とハードコートへの応用
1. UV 硬化プロセスとその応用
2. 光開始剤内蔵型高屈折樹脂の特徴
2.1 特徴
3. 光開始剤内蔵型高屈折樹脂の特性値
4. 光開始剤内蔵型高屈折樹脂と有機-無機ハイブリット化樹脂の作成と考察
第3章 インクジェット用UV硬化型インクの開発動向
1. インクジェットにおけるプリントメカニズム
2. インクジェット用紫外線硬化型インクの主要成分
2.1 モノマー
2.2 重合開始剤と増感剤
2.3 重合禁止剤
2.4 水性紫外線硬化型インク
3. インクジェットにおける吐出安定性
4. インクジェット応用における紫外線硬化型インクの開発動向
4.1 インク小滴化と酸素阻害
4.2 ゲル化によるピニング
4.3 デコラティブへの適用と高延伸性インク
4.4 食品包装でのマイグレーション防止
第4章 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 UV硬化型接着剤の基礎とその評価
1.概要
2.分類
2.1 ラジカル重合型
2.2 カチオン重合型
2.3 アニオン重合型
2.4 付加重合型
2.5 その他
3.評価
第2節 UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例
1. DVD ボンディング用へのウレタンアクリレートの適用
2. タッチパネルへの適用
第5章 UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用
1. ナノインプリント法とUV硬化樹脂
2. UVナノインプリントのためのUV硬化樹脂の要件
2.1 ナノ空間への樹脂充填過程
2.2 ナノ空間中でのUV光照射過程
2.3 ナノ空間中でのUV硬化過程
2.4 離型とUV硬化樹脂
2.5 UV硬化収縮
3. UVナノインプリントの応用
3.1 UVナノインプリントの用途
3.2 UVナノインプリント用UV硬化樹脂レジストの現状と今後
4. まとめ
第6章 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向
1. 3Dプリンティングとその分類
1.1 材料市場
2. 3Dプリンティングとその用途
3. 3Dプリンティングで使われる手段
4. 光硬化性樹脂を用いる3Dプリンティング
4.1 レーザを用いる大型の自由液面方式液槽光重合法
4.2 下面からレーザ光を照射する規制液面方式と下面から
UV-LEDや紫外線ランプを用いてDLPを用いて光照射する規制液面方式
4.2.1 レーザ光を利用する下面照射規制液面方式
4.2.2 DLPやLCDを利用する下面照射規制液面方式
4.2.3 光硬化性樹脂の開発動向
4.3 インクジェット方式により光硬化性樹脂を吐出し紫外線ランプにより硬化させて積層する方式(MJT)
5. 造形物の用途とその材料
5.1 自由液面方式VPP造形物の用途と材料
5.2 規制液面方式VPP造形物の用途と材料開発動向
5.3 インクジェットタイプの材料噴射方式の造形機
6. 光硬化性樹脂を利用する新しい造形
6.1 セラミック造形
6.2 ポリテトラフルオロエチレンの造形
6.3 金属造形
7. まとめと今後の展望
第2節 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向
1. 3D ゲルプリンティング用材料
1.1 光重合開始剤
1.2 光吸収剤
1.3 3D ゲルプリンティングのハードウェア
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