書籍 印刷

医療データ(RWD)/RWE利活用時の100の落とし穴
=落とし穴にはまらないための処方=
(承認申請・MA・マーケ・PV領域・DB研究での活用スキル)

~「別の目的で蓄積されたデータ」を利用する際の様々な落とし穴とその対策~
~難解な言葉を多用せず、分かりやすく解説~

本書籍は、【電子版(ebook)付き】もご用意しております。
 >> 【電子版(ebook)付き】をご希望の方はこちらから
※本書の電子版は10アカウントまで閲覧可能です(1アカウントの閲覧可能PC数:1台)
 
サイエンス&テクノロジーのebook(電子書籍)
■アプリインストール不要の
WEBブラウザ閲覧が可能に(オンライン環境)
■アプリでの閲覧の場合 : 一度ダウンロード後は
オフラインで閲覧いただけます。
10アカウント/10端末まで閲覧でき、社内・部署内での情報共有が容易です。
著者青木 事成 (株)ePidence based(エピデンスベイスド) 代表取締役
 【中外製薬(株) にて薬剤疫学 プロフェッショナルとして勤務(2025/9まで)】

 【執筆者紹介】

【主な製薬業界・アカデミア活動】
日本製薬工業協会/ 医薬品評価委員会/ 医療情報DB 活用促進TF リーダー
(2025 年まで)
日本製薬団体連合会/ 安全対策WT3(薬剤疫学・医療データ活用促進)リーダー
(2025 年まで)
日本薬剤疫学会 評議員
発刊日 2026年2月20日
体裁B5判並製本  約220頁
価格(税込)
各種割引特典
27,500円 ( E-Mail案内登録価格 26,125円 ) S&T会員登録とE-Mail案内登録特典について
定価:本体25,000円+税2,500円
E-Mail案内登録価格:本体23,750円+税2,375円
早割価格(発刊日まで):24,200円 ( E-Mail案内登録価格 22,990円 )
定価:本体22,000円+税2,200円
E-Mail案内登録価格:本体20,900円+税2,090円
(送料は当社負担)
■アカデミー割引価格:19,250円(17,500円+税)
(アカデミーの場合は、キャンペーンに関わらず上記価格となります)
ISBNコード978-4-86428-347-2
CコードC3047
​<本書のポイント>

 

◆難解な言葉を多用せず、とても分かりやすく解説◆

~単に事象を解説するだけでなく、なぜそのようなことが必要なのか、その概念を補足し、理解を深める~
 

<こんな目的で医療データを利活用する際の落とし穴に落ちないために、、、>
 ・製造販売後DB調査の企画立案時に注意するポイントを理解に、、
 ・承認申請における対照群としての利活用のために、、
 ・メディカルプランにおいてDB研究や製造販売後調査の計画のために、、
 ・RWD解析による仮説生成および強化のために、、
 ・RWD特有の留意点等が多いことを実感しており、知識習得、情報収集のために、、
 ・PMS調査を実施にあたり、データの見方や扱い方、またその切り口を考え、
  有害事象や死亡に関する考察を形できるようにするために、、
 ・安全対策が必要か否かを見極める専門性を高められるようにするために、、


◆理解すべき主なポイント
 ・信頼性とは(空欄のとらえ方、外れ値、CSVの視点、、、)
 ・法規制の順守(個人情報保護法の理解、次世代医療基盤法の理解、、、)
 ・RWD の種類と特性を知る(データ特有の留意事項:レセプト由来データ・DPC 由来データ・
               電子カルテ由来・レジストリ由来、、、)
 ・研究のセッティング(仮説生成なのか、仮説検証なのか、病名・アウトカムの定義をどうするか、、、)
 ・研究をデザインする(記述集計・コホート研究・ケース・コントロール研究などの留意点とは、、、)
 ・気を付けたいバイアス(統制なき実態・時系列関連、、、、)
 ・統計解析(2 群をフェアに比較する・作法としての解析計画、、、、)
 ・結果の解釈と整理整頓(研究結果の一般化・転用可能性を考える・データの適切な保存と管理、、、)

■Chapter 1 エビデンス要求の高まり 
本書が企画されたのも、こうした社会的な潮流や背景事情とは無関係ではないだろう。特段、ヒトの命にも関わる病気や医療に関するデータは、適切に利活用されるのであれば健康の増進や寿命の伸長に貢献する一方で、間違った利用や解釈のされ方をしたときにはその逆ともなり得る。特に本書で取り上げるところの医療現場由来の医療データ(Real World Data)は概して研究などの二次的な利用に配慮したものとは限らず、元を正せば「捨てずに残っていただけの電子上の残存」でしかないことも多い。このような“残りモノ”を利用しようというのだから適切に利用する、ということのハードルは低くない。

■Chapter 2 目的の明確化 
RWD の利用を始めるに当たっては、まずはその目的を明確にする必要がある。「そんなの、当たり前だろう」という声が聞こえそうではある。しかしながら、利用しようとしている人の中には自分がなぜRWD を使うのか、実は整理がついていない人も案外多い。また目的意識の曖昧さに無自覚な人も少なくない。まずはRWD の利用を始める前にその目的が明確なのかどうかを確認することからスタートしよう。

■Chapter 3 RWD の選択 
目的がクリアになり、既存の研究の探索も進めば、何が既に分かっていることであり、一方で何がまだ満たされていないのか焦点が定まってくるだろう。例えば欧米人において治療Aのリスクは許容範囲であることが既存の研究から明らかだが、アジア人にとってはどうなのか。あるいは大抵の人にとっては月に1度の検査で済むことはほぼ証明されているようだが、病状が進行した場合も果たしてそうなのか、むしろ隔週に2回の方がベストなのか、といった塩梅である。こうした状況下にあって、「知りたいこと」に対して、エビデンスとまではいかなくても「何らか役に立つ情報が得られそうだ」という、適切なRWD を見つけることは経験値も必要となってくる。選択肢が増えることは好ましいことではあるが、利用目的に即したRWD を選ぶことに迷いが生じることになる。ここでは目的に整合したRWD を適切に選択するうえで注意したい事項を整理してみたい。

■Chapter 4 RWD の信頼性 (1)入力ミスと向き合う 
「データの信頼性」という言葉には多義性があり、言葉を整理しないまま展開したのではあらぬ思い違い、ミスリードといった落とし穴にはまってしまうだろう。RWD の信頼性という視点における落とし穴を整理するうえで、まずは言葉の整理から始める必要がありそうだ。

■Chapter 5 RWD の信頼性 (2)バリデーション 
日本人は「ミスは恥である」と認識しがちであるが、アメリカのような合理主義では「ヒトはミスするものだ」として、ミスが一定量発生する前提にてその発生レベルが実用上において許容レベルに収まるかどうか、あるいは同じミスを繰り返さないための方策としてどのような対応を加えるべきか、その対応により発生するコストはミスの減少に見合う投資なのかどうかという発想をする。こうした発想からQuality Assurance(QA)、Quality Contro(l QC)といった概念が生まれており、然るに品質、と言えばバリデーション(validation、妥当性)のニュアンスが「ミスが少ない」ニュアンスよりも欧米文化にあっては重要視されるのである。ここでは種々のQA、QC、バリデーション対策について注意したい落とし穴を整理してみよう。

■Chapter 6 要求されるスキルの充足 
「知りたいこと」がささやかなことであれば自分一人でどうにかできるだろうが、それが困難なものであったり、より高い専門性を要することであったりした場合、先立つものとしてはお金だけでは足りない。医師免許を持っていたからといって、医療経済学の専門性まで所有しているという人は多くないし、その逆も然りである。RWD を使った研究には様々なものがあり、場合によっては様々な専門性が結集しなければ実施することが難しいという研究もあろう。不足するスキルセットには、今どきの生成AI に助けてもらうだけでは済まない、自身が所有する専門性とは別の専門性を持った仲間の存在が時に必要となるのである。

■Chapter 7 法規制の順守 
RWD を活用するに際しては、こうした患者サイドの思いにも十分配慮したうえでこれを利用するべきであり、特に電子カルテ由来のデータ等を症例個別に取り扱うような場合は偶発的に当人を特定できてしまう可能性があることを踏まえなければならない。個人情報保護法等の理解は、決して法規制に明るい人だけに任せればよいというものではなく、すべての研究者がこれを理解したうえで順守しなければならないものである。その一方で、個人情報の保護に気を付けなくても構わない種のデータもある。例えば経済産業省が公開しているデータや、医療データ系であってもNDBオープンデータ、あるいは副作用報告のレコードが累積されているJADER(Japanese Adverse Drug Event Report database)などは誰でもアクセスが可能であるし、どのように扱っても患者本人にたどり着くような偶発的なことは起きないだろう。ここでは、法規制の視点から考えられる落とし穴について整理してみよう。

■Chapter 8 国際整合と国際協調 
製薬産業にあって、内資系なのかそれとも外資系なのかといった分類に関係なく、もはや顧客であるところの医療者や患者は日本だけにとどまっていないと認識する方が自然であろう。RWD においてもこれは同様であり、然るに自社の医薬品処方情報が海外にあるということは珍しいことではないし、その逆に日本での処方情報を海外にある本社と共有するといった立場の人も少なくはない。こうした職務や立場にあるならば日本の規制では問題がなくても海外において、あるいは海外と国内の送受において特異な落とし穴にも気を付けなければならない。また、海外との送受に携わっていなかったとしても、グローバリゼーションの視点からは、海外情勢が日本の情勢に先んじて変化するということは数多の産業においての当たり前であり、国際的な動向を知ることは日本の未来を予測するということでもある。ここでは前述したICHほか、EU、アメリカの動向について気を付けなければならない点は何か、整理してみよう。

■Chapter 9 RWD の種類と特性を知る 
大まかにRWD と呼称されるものには様々なものがあることはID:003[RWD の種別を知る]で紹介したとおりである。ここではRWD をそれぞれのデータ種に分けて、それぞれにどのような落とし穴が潜んでいるのかを考察してみたい。

■Chapter 10 研究のセッティング 
RWD の活用と言っても、単純に男女比の割合を求めて円グラフにするだけ、というものから、場合によっては当該の研究の結果をもって当該の医薬品の発売中止を判断しようなどといったシビアなものまで種々ある。ここでは広く研究を実施する際のセッティング、セットアップのところで気を付けたい落とし穴について整理してみよう。セッティングが優れていれば、研究デザイン自体はシンプルな頻度集計でしかなくても、「日本人の〇%が〇〇病である」「〇〇病の生存割合は10 年で〇%である」といった研究結果を得ることができる。

■Chapter 11 研究をデザインする(1)基本 
研究のセッティングが済んだら、次は研究デザインを考える―。参考図書の多くはこのような順序で解説を加えることが常なのだが、それはむしろ紙面上あるいは電子書籍であれば電子上の都合にてこのように整理しているというのが正しいだろう。要するにRQ の設定、研究のセッティング、研究デザインの策定、あるいは指標の決定などは頭の中で行ったり来たりするものであって研究デザインが決まらなければ研究のセッティングなどできないだろうし、逆に研究のセッティングに実現可能性が低いとなればよい研究デザインを想起することは難しい。ここでは研究デザインの策定、あるいは策定した研究デザインのそれぞれに分けて気を付けたい落とし穴について整理してみよう。

■Chapter 12 研究をデザインする(2)多様なアプローチ 
古典的なデザインのみならず、より多くのアプローチを知っておくことで、目的に即した研究デザインを設計できる可能性は高まる。ここではあまり知られていないものの、知っていれば案外と研究に使えそうなデザインをいくつか紹介しながら、当該デザインを研究に選んだ場合の落とし穴について整理してみよう

■Chapter 13 用いる指標あれこれ 
記述集計の場合に用いる指標としては平均値や中央値、四分位点、標準偏差や標準誤差を用いた信頼区間幅といったものが想起される。その一方で、複数の治療群を比較するという場合ではリスク比、オッズ比、ハザード比やそれらを補正した調整値などが用いられる。目的に即した適切な指標を選ぶということは重要であり、そのうえでそれぞれの指標の何たるかについてはあらかじめ十分に理解しておく必要がある。ここでは主に疫学分野でよく用いられる指標について概説しよう。

■Chapter 14 研究の作法 
ニュートンやアインシュタインほどの偉大な科学者ではなくても、RWD を使って何らかのささやかな一歩を踏み出す人もまた科学者であり、科学的発想は社会的には常識にとらわれないことが強みとなるように私には思われる。しかしながら、その科学者は社会的異端者かといえばそうでもない。科学にも作法はあるのであって、論文投稿をする際には規定に従うことは必須である。ここではRWD 活用にも関連してくる科学的な“作法”について概観してみよう。

■Chapter 15 気を付けたいバイアス(1)統制なき実態 
RWD が収集される源泉となる臨床現場では、臨床試験のようにデータの管理監督が充実しているわけではない。それゆえに臨床試験では発生しえない、あるいは発生しにくいタイプのバイアスがRWD には様々に内包されていることを承知しておく必要がある。とりわけ臨床開発部門に長く従事していたという経歴の人はこのようなバイアスに気付きにくく、スッポリと落とし穴に入り込んでしまう可能性が高いといってよい。もちろん、だからといって「RWD は使い物にならない」などと短絡的に否定するものではなく、こうしたバイアスを十分理解したうえで、ときには正当な対処の仕方もあることを学ぶことが肝要となる。例えばRWD にはデータの欠落、欠損がつきものであるが、問題はそのデータ欠損をどのように乗り越えて、よい調査・研究を実施できるのかということである。

■Chapter 16 気を付けたいバイアス(2)時系列関連 
疫学分野で知られるところのバイアスを列挙すると、それだけで落とし穴は100を超えてしまうかもしれないのだが、そういうわけにもいかないだろう。臨床試験のように統制されていないことにより生じ得るバイアスのいくつかは既に紹介したとおりである。ここではそれに加えて、RWD を用いて時系列で分析することを想定したうえで、その際の落とし穴として生じ得るバイアスをいくつか紹介することとしよう。

■Chapter 17 統計解析(1)2 群をフェアに比較する 
実体下の医療現場にあっては、無作為化臨床試験のように、複数種の治療選択肢がランダムに選ばれるということはあり得ない。容態が悪い人に処方されがちな医薬品もあれば、効き目がマイルドで(つまりあまり効き目が良くなく)しかしながら副作用の懸念の少ない医薬品をむしろ積極的に処方される患者群もいるのが常である。このように“作為”的に、当該の患者にとって最適だと考え選ばれた治療について、その治療成績を何ら補正もなく比較しようというのは無謀である。なぜならば、より効き目の鋭い医薬品の方に明らかに不利な比較となるからである。では、どうするのか。ここではRWD を利用した研究として標準的な「2つの治療間を比較する」目的を果たすうえで、フェアに比較するための方法論について紹介し、それぞれの留意点を整理する。

■Chapter 18 統計解析(2)作法としての解析計画 
ひと口に統計解析上の課題といっても、実際の手法をどうするのかという判断とはまた別に、流儀や文化としての留意事項もある。落とし穴にはまらないために統計手法を知っていればそれで問題なし、とはいかないのである。RWD を使った集計解析を実施するにあたり必須ということではないのだが、それでも研究の結果を自身以外の第三者が見るということを想定するのであれば解析計画書を作成する必要があるだろう。研究計画書(プロトコール)の必然性と比して解析計画書は文字とおり集計解析に特化して詳細を記載するものであるが、当該研究領域の文化慣習として研究計画書に内包している場合もあれば、その逆にグラフ表記の細かい設定やプログラムの文案まで準備するというものまである。解析計画書の何が正しい定義であるのかという統一された基準はないのだがここでは解析計画に関わる事項とそれぞれの落とし穴、注意事項について整理してみよう。

■Chapter 19 結果の解釈と整理整頓 
集計、解析、分析といった用語は、どこまでの行為のことを指すのかがあいまいなところがあるが、もっとも狭くとらえるならばプログラムや集計ツールを実行したところまでとなろう。その後、描写されたグラフがどうにも見づらかったり、色彩に不満があったりして幾度となく視覚化の処理を変更したりもするが、こうした行為も人によっては集計、解析、分析というのかもしれない。あるいは得られた結果をどのように受け止め解釈するのか、という工程までも含むかもしれない。言葉の定義はともかくとして、少なくともプログラムを実行して研究終了、とはならないのは確かであろう。得られた結果はどのように解釈されるのか、あるいはその再現性や第三者による監査・査察を受ける可能性など、状況によって「後の処理」は種々違ってくる。ここではプログラム実行から視覚化、そしてその後の解釈等についてどのような落とし穴があるか整理してみたい。

■Chapter 20 論文化と公表 
これまで見てきたようにRWD の利用については、自身が利用するだけで特にその結果を自分以外とは共有しないといった利用もあれば、その結果について厚労省やPMDA へ提出するといった薬事利用もある。ここでは利用した結果を文章にして公開するといった場合の落とし穴について概観してみたい。せっかく研究したのであるから、その成果は研究者らの内部に留めておくのではなく、広く公開して“社会財産”とする行動が望ましいだろう。なお、公開といっても会社のサイトで公開することや研究成果を学会でポスター発表するといったものがあるが、ここでは論文化し専門雑誌等へ投稿する場合を基本的に想定している。

■Chapter 21 研究実施のその後 
研究結果が無事に論文としてアクセプトされたり、あるいは行政とのコミュニケーションに利用されたりすることで目的達成となれば一段落、気持ちも晴れやかにスッキリとするだろう。一方で、案外とスッキリしない部分、モヤモヤ感が残存することもある。欲しかった項目を入手できなかったり、データ量が不十分なため精度が不満足だったりと、心残りがある方がむしろ多いかもしれない。ここでは、このモヤモヤ感を緩和する感情論と、科学としてのエビデンス向上という二つの視点から「次に何をする?」について考えてみたい。次の一手を講じるに際して、どういった注意事項や落とし穴があるのだろうか。

■Chapter 22 今後想定されるRWDの拡張 
ご存知のとおりAI の進歩は電子化されたデータが支えているものであって、然るに当面はデータ活用の進歩は今後益々、勢いを増すように思われる。当然のことながら医療データ、RWD も多分に漏れず利活用は進むのであろう。最後のパートでは、今はまだ実用化・本格化が途上にあるところの、医療系の研究に用いられることになるであろうデータについて概観してみたい。来るべき将来に備えてスキルを磨いておくことは重要であり、本パートにおいてはそのような準備を怠ることを「落とし穴」ととらえることになる。